2013年07月06日

TTSS「水浴び」(K)

TTSSやりたいなって思ってアキトさんからお題「水浴び」をいただいたので
30分間タイムトライアルSSやってみました。

続きから、水を浴びまくっています。



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 じっと見つめる足元には、自分を中心にそれほど小さくない水たまりが出来ていた。見ている間にも毛先を伝い、ぽたっぽたっと滴り落ちてくる。
 ロマは、頭のてっぺんからつま先までずぶ濡れになって、ただ黙って立っていた。
「なあにその顔は。可愛くないわねぇ。こっちを向きなさいロマ」
 聞く者の耳を汚すようなひび割れた声が、慣れた口調で命じる。顔を上げると、見る者の目を汚すような風貌の、男とも女とも判断つかない気色の悪い人物がロマをねめつけていた。グズだ。
 その切れ上がったまなじりをさらに鋭くし、
「誰が床を汚していいと言ったかしら。──さっさと拭きなさい!」
 声を荒げて威圧する。
 同時に膝を屈したロマだったが、その声に気圧されたというわけではない。声と同時に黒い塊のような魔力の圧力が、ロマを押し潰さん勢いで両肩にのしかかったのだ。
「……はい、ただいま」
 無表情は変わらないまま、ロマは着ていた上着の前を開けると無造作に脱ぎ、そしてそのまま床に落とす。すでに半分濡れていた上着だったが、じわじわと水を吸う上着の染みが広がらなくなった頃を見計らって、またそれを取り上げ、何事も無かったかのように着た。
 黒い塊の圧力に耐えて、再び立ち上がったロマがグズに顔を向けたその瞬間、

 ──ばしゃんっ

 ふたたびロマはずぶ濡れになった。今度は視線をグズから外さず、直立不動で水を滴らせる。
「……可愛げがないわね。お前が、暑苦しい顔をしているから少し涼しくしてやろうとしたのに、よくならないわ」
 はぁ、やれやれ、という様子で大仰にため息をつく。
 そして、グズが何もない空間で指先をくるりと回すと、それに呼応するようにロマの頭のすぐ上に三度、水球が現れた。
「もっと水浴びがしたいのかしら?」
 ひび割れた声と気色悪い眼差しが、愉しげに嗤った。
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posted by SかK at 22:44| Comment(0) | TrackBack(0) | SS
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